当館について
昆蟲館
『ファーブル昆虫記』の翻訳者として、また数々の昆虫関係の著書で知られるフランス文学者の奥本大三郎先生からは、当プロジェクトの計画の初期段階から多大なご支援を賜っておりまして、開館にあたり当館の名誉館長に就任していただきました。また、当館の館名の揮毫をしていただき、昆虫館の土蔵の白壁にその文字を掲げさせていただきました。一般的にムシは「虫」と書きますが、「虫」は中国では蛇のマムシを意味するそうで「ギ」と読み、ムシは「蟲」が正式の字で「チュウ」と読むとのことです。したがって、奥本先生には「昆蟲館」と書いていただきました。そしてこの「昆蟲館」の文字は、正統派を目指す当館の立ち位置を示すにふさわしい、当館の象徴としたいと思います。
奥本名誉館長の近著

奥本大三郎名誉館長

虫の里
皆さま、「虫の里 福島・奥久慈」へようこそお越しくださいました。当館の開館にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。私は長年にわたり捕虫網を片手に、世界の蝶類を収集研究してまいりまして、その研究の総集成として世界のアゲハチョウ全種を網羅した『世界のアゲハチョウ図説』を上梓いたしました。そしてそのコレクションを公開保存するために、この度、福島県矢祭町の江戸期から続く庄屋古民家「佐川家」を拠点とし、「虫の里 福島・奥久慈昆虫館」を開設する運びとなりました。またアマチュア研究者の皆さんの標本も広く受け入れたいと考えております。
当館は、単に昆虫標本を保管展示するだけでなく、生きた昆虫たちが息づく豊かな里山そのものを「昆虫の楽園」として皆さまにご提供したいと願っております。また稀少な昆虫標本の常設展示や特別企画展示を通じて、自然科学への知的好奇心を刺激する学びの場となることを目指しています。そして、子どもたちが安全に昆虫と触れ合い、将来の科学者へと羽ばたくきっかけとなれば、これほど嬉しいことはございません。
(館長:中江 信)
中江館長の書籍

中江信館長
標本の重要性
戦後の一時代を華々しく活躍していたアマチュア昆虫家たちの高齢化にともない、鬼籍に入られる方も少なくありません。そして、長年にわたって蒐集されてきた多数の貴重な標本が散逸、消滅することが現実の問題となり、危惧されています。一方、どこの公的博物館でも標本収蔵能力が限界に達して、とてもアマチュア研究者の標本を受け入れてもらえる余地がないのが現状です。地球温暖化や自然破壊で昆虫たちの生息環境が狭められ、また国際的に天然資源の自国保護の風潮が高まったことで標本の持ち出しが厳しく制限される中、かつて国内外で集積された標本は得難いものとなり、ますます貴重なものとなっております。そこでこの昆虫館の収蔵施設が微力ながらそれらの標本の受け皿の一つになればと考えました。
将来、生物の研究や分析技術がさらに進んで、いざ新しく分析しようと思った時に実物の標本は不可欠であり、無限の情報を秘めたタイムカプセルのようなものと考えています。そのためにも、きちんとしたラベルの付いた標本を残すことは次世代へ向けた私たちの責務と考えます。この昆虫館が将来の生物学の発展の一助となることを確信しております。
(副館長:寺 章夫)